のど飴の材料だけじゃない!? リアルで見るのは珍しいカリンの食べ方
生では食べられないカリンは昔から漢方の生薬として人類の咳を癒してきた優れもの
カリン……と聞くと、若い子は「それなに?」と首を傾げ、中年以降は「ああ、のど飴の材料ね」とすげなく言うでしょう。
それほどまであまり知名度のない果物なのですが、このカリン、日本全国で栽培されており、庭園樹として人気な他、薬用などに広く利用されています。
元々は古代中国で観賞用や薬用として利用されていたのですが、平安時代ごろ空海が日本に持ってきた……と言われています。
1578年頃の中国の書物「本草網目」には「カリンの生薬は酔い覚まし・去痰に効果あり」と書かれており、実際、体内に滞った余分な水分を取り除き、喉の炎症を緩和し、咳を鎮めてくれる効果があります。
それゆえに、のど飴に配合されていることが多いのですが、このほかにも優れた効果があったのです。
カリンの効果は抗がん作用まで!?
カリンは基本的に咳止めやのどの痛みを和らげることを期待されていますが、実は肝臓の働きを良くしたり、イライラを鎮める効果もあったりします。
また、カリンを煮出した汁には苦味があるのですが、その苦味は胃腸を丈夫にするといわれており、さらに、ビタミンCやタンニン・サポニンが含まれているので、抗がん作用も期待されていると言われています。
そのほか、利尿作用・下痢止めなどかなり色々な用途で利用されています。
日本では「和木瓜(わもっか)」という名前で漢方として使われてきました。
因みにこのカリン。
栄養があるものの、食べにくいこともあり、年配の方は「車の芳香剤」として利用していることも。
カリンは独特の甘酸っぱい香りがあり、一つでも充分なほど芳香剤のような役目を果たしてくれます。
ただし、カリンは表面がべとべとしているため、シートなどにつくと汚してしまう可能性が高いため、芳香剤として車に置く時は、しっかりと箱に入れるようにしましょう。
生のカリンはどうやって食べればよい?
さて、このカリン。
あまり「フルーツ」として目に入ることがないには理由があります。
まず、第一にカリンは強い渋みがあり生で食べることができません。
そのため基本的にはカリンは後述する「焼酎漬け」や「はちみつ漬けシロップ」「ジャム」等にして食べます。
そしてあまり見かけなくなった理由として、カリン農家が減ってしまい、ピーク時は900tも出荷されていたカリンも、現在では200tを下回るほど……。
それに、カリンは育てるのに手間がかかる上に、植えてから10年以上かけないと実が実らないという難しい果樹。
ですが、カリンは喉の美容液とも言われている生薬。
ポリフェノールもリンゴの25倍ともいわれています。
ぜひ、ここでおいしい食べ方を知り、チャレンジしてもらいたいものです。
【ストレスを感じたらカリン焼酎で】
ストレスがたまるとお酒を飲んで解消する方は多いと思いますが、せっかくなら、ストレス緩和によいとされているカリンのお酒にしてみませんか?
作り方は簡単。
カリン500グラムを皮ごト5mm程度にスライスして、150gの氷砂糖と一緒に焼酎1000mlにつけるだけ。
半年~1年寝かせる必要がありますが、カリンエキスが十分に出たカリン酒は、炭酸で割ってもお湯で割ってもとても美味しい一品。
ほっと一息つけるでしょう。
【二日酔い予防には+リンゴを】
カリン酒がおいしすぎて飲み過ぎてしまい二日酔い……なんてことにならないよう、二日酔いを予防する際にはりんごのすりおろしを加えてみましょう。
カリンは元々肝臓の働きを良くしてくれるのですが、リンゴは、お酒を飲むことで溜まってしまう体内の熱を取り除く作用があります。
この二つの効果を活かして、翌日の不安を少しでも取り除き、おいしくお酒が飲めるようにしましょう。
とはいえ、やっぱり飲み過ぎは禁物です。
【カリンのハチミツ漬けで天使の歌声に】
カリンの性能を100%活かせるのが、カリンのハチミツ漬け。
喉の痛みを和らげるハチミツと、喉の生薬カリンで、美声を保ちましょう。
カリンのハチミツ漬けの作り方も簡単。
カリン500gを5mmの厚さにスライス。
そのスライスしたカリンがヒタヒタになるくらいまでハチミツで漬けて、2か月ほど寝かして完成。
シロップを炭酸で割ってもよし、ヨーグルトにかけてもよしの最高の一品です。
カリンには注意が必要なことも
喉の生薬として優れた栄養素を持つカリンですが、一つ重要な注意点があります。
カリンは「アミグダリン」という成分があるのですが、これが喉に効く……というのはよいとして、実は体内に入ると「シアン化合物(青酸)」に代わってしまうのです。
ですが、そのような食べ物は青梅など多く存在していて、「渋くて硬いカリンの生の果実を大量に食べる」「種を大量に食べる」という事をしなければ、全く問題ありません。
シロップ漬けやアルコールに付けることによって、梅干しと同じように毒性は分解されていきますので、安心して食べてください。